※描写はそんなにえろくないけど状況としてはがっつりえろいことしてる
※母親のお腹の中に倫理観を落っことしてきたタイプのクダリさん
※夢主→ノボリさんで、ノボリさんは特に出てこない
※クダリさんが本当にひどいひとだし、夢主はひたすら可哀想


「ただいまー」
 薄暗い部屋の戸を開けながら、声をかける。返事は無い。まあ、ぼくは一人暮らしだから当然といえば当然なんだけど……それは、表向きの話。今は違う。ベッドの上の同居人に、もう一度やさしく声をかけてあげる。この人形のように力無く手足を投げ出して横たわっているのは、ぼくのとーーーってもかわいい玩具。窓から入る月の光だけを鈍く反射させる瞳が、ゆっくりとこちらを向いて……日がな一日そうしていたのか、また天井を見つめる作業に戻っちゃった。返事も、やっぱり無い。まあ、数日前からずっとこんな調子だからぼくも特に気にしないで近くに寄っていく。
 死んでたら面倒だけど、そうじゃないなら構わない。でも、このまんまだとつまらない。だから、ぼくはベッドサイドに腰掛け、耳にかかるの髪をするりとよけてあげて、そっと囁いた。とっておきの呪文を、孵化したてのチョロネコよりもずっと甘い声色で。
「ね、……〝ノボリに会わせてあげよっか〟」
 そう言った途端、ぼくの予想通り彼女の瞼が本来の仕事を思い出したようにパッチリと開いた。何も映していなかった瞳が、ぼくの満面の笑みを反射している。うれしい? と聞いてあげると、の頭がこくりと小さく動いた。わずかでも反応を寄越してくれたことに気分を良くしたぼくは、サイドテーブルのほとんど減っていないプレートからパンを取り上げて、少しちぎった。
「でも、ぼくの機嫌次第だから……分かるよね?」
 がんばってねと励ましながら口元に運んであげれば、はマメパトよりも小さく開いた唇でそれをついばんだ。

 ***

 は、元は別の部署の子で、今はバトルサブウェイ所属のぼくの部下。そして、ノボリに恋する、真面目で努力家のかわいいかわいい女の子。
 他部署との打ち合わせで初めて彼女を見た瞬間、ぼくはピーンときた。これは面白いことになるかもって。だって、すっごく熱く一途にノボリを見つめるこの子の目を、当のノボリは全く気がついていないんだもん。たまたま見つけた、ぼくだけが気付いた、バツグンに面白そうな興味の種。
 それからすぐに、彼女の適性もあったけれど優秀で勤勉なところを評価したという形で異動話を持ちかけて、バトルサブウェイに転属させてあげた。勿論ダブル専属で。シングルに行きたかっただろう彼女には残念だけれど、以前のほとんど無関係の部署に比べたら憧れのノボリにぐっと近付けることには違いないし、花形部署への栄転ってことでこの話には二つ返事で乗ってくれた。もちろん、ぼくがやろうと思えばノボリに彼女を紹介して話を通してシングルにしてあげることだってできたけれど、別に慈善行為で彼女を引き上げようとしたわけじゃないからね。しかたないよね。
 異動してきてから元の部署や周りの期待に応えようと一層奮起する彼女に応えて、ぼくは色んな仕事を振ってあげた。ぼく以外の人間とは長く同じ仕事をしないように気を遣いながら、彼女が処理しきれそうでしきれないギリギリの量と難しさの業務を見極めるのは骨が折れたけど、あれはあれでなかなか楽しかったし、マネジメントの勉強にもなってよかった。そうして、仲の良い相手も居ない孤独感の中積み重なる不甲斐なさと罪悪感で顔をいっぱいにしてぼくに謝るは、快く笑顔で手伝うぼくに素直な感謝と尊敬と申し訳なさを示すは、ぼくの期待通りとってもかわいらしくて、とってもいじらしくて、とっても可哀想で、とっても面白かった。
 その上で、一番大事なところを詰めていった。まず彼女の仕事の九割をノボリとは絶対に関わらない時間や場所にする。そして残りの一割は、やっぱりノボリに接触はできないけれど姿だけは遠目にこっそり好きなだけ眺められるようなものを不定期に設定してあげた。これは正直どう転ぶか予測しきれないちょっとした賭けだった。けれど結果的にのノボリへの恋心を……ううん、詩的な表現を抜きにすると〝執着〟を強固にするには、思った以上の効果があった。この調整のおかげで、の心は着実にすり減りながらも折れることはなく、かつノボリから気が離れすぎて飽きるということもなく……むしろ、苦しみの中のわずかな希望、救いだとでもいうように、のノボリを見る目はどんどん熱く、必死なくらいになっていった。多分、視線に感触があったら、ノボリ、しめつけるでもくらったみたいになってたと思う。
 そのノボリからは相変わらず名簿上でしか認識されてない一職員のままだっていうのが、これまた奇妙でぼくを楽しませてくれた。
 そうしての心が限界ギリギリまで摩耗し変質してきたのを確認して、ぼくは最後の仕上げに取り掛かった。まず彼女を普段は滅多に使うことのない、ひと気の無い資料室にこそっと呼び出す。自分のミスに笑顔で対応し解決してくれるやさしくって信頼しているボスからの呼び出しだから、はなんの疑問も不信も抱かずに応じてくれた。ミスさせているのはぼくなのに、かわいいよね。がなんのご用事ですか、と尋ねるのを無視してニコニコしながら無言で一歩一歩近づいていくと、ぼくの影が彼女にかかる頃には流石に不安を顔に滲ませたけれど……それでもすぐ後ずさったり逃げたりはしない辺り、彼女に掛けた時間と労力の成果を感じてちょっと嬉しくなる。
、ぼくがきみをどう思ってるか、わかる?」
 そう揺さぶってみると、ぼくは具体的なことは何一つ言ってないのにったらサッと血の気が引いちゃって目まで泳がせ始めるから、おかしくって噴き出しそうになっちゃった。元々口角の上がった顔立ちでよかった。
 まあ、そうなるのも無理はないよね。自信を限界まで削られた状態でそんな曖昧な問いかけ方をされたら、責められてると思っちゃうよね。唯一頼れる優しい上司に見限られちゃうのかって焦っちゃうよね。まったくもう、掌の上で自由自在に転がってくれて、ってば本当にいい子だなあ。
「ねえ、きみのためにがんばってるぼくに、なにかごほうびがあっても良いと思わない?」
 もう一歩踏み出してみれば、流石にもなにか不穏を悟ったのか、ほんの少しだけ後ろに下がった。そのままゆっくり、じっくりと壁際に追い詰めても、は両手を胸元でぎゅっと握って、おどおどとした上目遣いでぼくの顔色を窺うだけだった。捕食者の気分ってこんな感じなのかなあ、と思いながらその怯えた顔に覆い被さってあげた。といっても、ぼくは別に彼女を襲うこと自体が目的じゃないから、子供みたいにちゅっと唇を合わせるだけ。たったそれだけでも、恋する女の子は青くなったり赤くなったりしながらぶるぶると震え出した。
「な、なに、なにを……い、いくらクダリさんでも、こんな、ひ、ひどい、です……!」
 今まで従順を極めていた彼女からの初めての非難に、肩が震えるのを必死に堪えた。遺伝子的にはぼくも実質ノボリみたいなもんなのに、ひどいとは随分な言い草だなあ。そう思いながら、またひとつピースを嵌めていく。完成はもうすぐ。丁寧に、崩さないように。
、誰かに言う?」
 ぐ、と息を呑む音。そこで黙っちゃだめだよね。そもそも、壁際に追い詰められる前に声を上げたり、走って逃げればよかったのに。……まあ、転属直後ならまだしも、今の壊れかけのお人形さんにそんなことができるわけがないから、そう責めるのは酷な話。
「……あーあ、どうしよう! これが公になったら……〝ノボリが困るだろうなあ〟……」
 だから、白々しいほどの台詞だって、バツグンに刺さった。
 ああ、ぼくがいなくなったらノボリ大変だろうな。過労で倒れちゃうかも。もしかしたら気に病んで仕事辞めちゃうかも。双子の片割れがそうなら、なんてノボリも疑われちゃうかも。ぼくの口からポンポン出るでまかせのひとつひとつを受ける度にどんどん青を通り越して白くなっていくがかわいくって面白くって、声が震えないように抑えるのが大変だった。
「ね、。きみは賢いから、どうしたらいいかわかる? ぼくのためじゃない、きみのためじゃない……〝ノボリのためにどうしたらいいかな?〟」
 ノボリを助けて。まかり間違っても手を出した側のぼくの口からは出ないおかしすぎる言葉なんだけど、はただ瞳を揺らしながら陶器のようになった顔で大人しく頷くから、調子に乗ってわざとらしく心配したような声音でぼそぼそと囁いてあげた。
「それにサブウェイマスターのぼくと、ミスだらけのきみだと、みんなはどちらを信じてくれるかな……きみが異動になっちゃうかも。そうしたら、きみ、〝ノボリと離れ離れになっちゃうね〟……」
 普通の頭をしていたらこんな滅茶苦茶な詭弁に騙されないだろうし、それもこれもぼくのせいだってビンタでもして罵倒するところなんだけど、残念、はもう普通じゃない。この子はもういっぱいいっぱいのところを、〝ノボリ〟という偶像に縋ってギリギリがんばっているだけ。だから、今のの頭にはぼくを責めることなんかよりも、〝ノボリを失うかもしれない〟……それで頭がいっぱいになっているはずだ。まあそもそも、離れ離れだなんて表現できるほどはノボリの近くに居たことなんてないから、滑稽な話なんだけど。ともかく、神さまを失うかもしれないって時にその信者がそれを守ること以外に頭が働くわけないよね。
が黙ってさえいてくれれば、全部丸く収まるんだけどなあ」
 がその道を選ぶように誘導したのはぼくだけれど……彼女が自分の意思で一度頷いてしまえば、あとは二度三度も同じこと、そしてずるずると続けば、ヒトは状況に慣れてしまう。
 これでは、ノボリの名前を出せばなんでも通るようになっちゃった。そういうふうに、ぼくがした。

 ***

 監禁だって、出来心だった。フィクションでよく見かけるけど実際やるとどうなのかなって興味が湧いただけ。丁度手頃な相手もいるし、試しにやってみてダメだったら諦めようと思っていたのに、うまくいっちゃったからしかたない。うーん、自分の手際と段取りの良さが怖い。といっても、大したことはしていないよ。に〝ノボリについて大事な話があるんだ〟って魔法の呪文を耳打ちしたら素直にのこのことぼくの家までやってきたから、そのまま用意していた部屋に誘導して錠をかけただけ。タブンネを捕まえるより簡単だったと思うよ、多分ね。
 とりあえず監禁がどんなものなのか知りたかっただけだから、外に出ないようにする以外はごはんもシャワーもトイレも好きにさせて放置していたけど、はノボリノボリと繰り返しながらさめざめと泣くばっかりだったし、時々逃げようとあがく方法もお粗末だったし……ぼくは早々に飽きてしまった。出会った頃はもうちょっと頭の働く子だったのに。まあ、玩具にするためには仕方がなかったんだけど……ううん、あちらを立てればこちらが立たず。難しいね。
 だからぼくは、気まぐれにを穢すことにした。純情を冒して、体を犯して、心を侵すことにした。
 別に性奴隷とかには興味は無かったし、生憎ぼくはそういうのが必要になるほどに強い性欲も特殊な性癖も持ち合わせていなかった。洗脳も監禁もその先の目的なんてなーんにも無くて、やろうとすれば本当にできるのかなって試したかっただけ。そしてその好奇心は満たせたからすぐに解放してあげても良いかなって思ったけど……折角だから、の面白い反応をたくさん引き出してみたくなっちゃった。
 口。耳。首。胸。腹。脚。もう一度口。そして最後にセックス。中に出すこと以外は大体やってみた。
 実際、日を追って冒す部位を増やしていく度に、犯し方を変える度に、は泣いて嘆願し媚びて懇願し、面白いほど騒いでくれた。そうやって少しずつを侵し進めていくことで、今日は何をされるのかという怯え、もうこれ以上は許されるのかという期待、やっぱりダメだった時の絶望……色んな顔色んな反応が見られて、ぼくはサイコーバツグンに楽しかった。
 そうそう、休職届はちゃんとぼくが作ってぼくが責任を持って受理しておいたよ。ぼくの勝手な好奇心で、が職を失っちゃうのは可哀想だもんね。やさしいでしょ。ぼく、そういうところは気がきくんだ。
 こうしみじみとやってきたことを思い返すと、うーん、やっぱりぼくってなかなかすごいかも。
「ん、ぅっあ、アッ」
「あ、そうだ。ご褒美あげなくっちゃね」
 の一際高い嬌声で意識を引き戻される。ぼくのが、のいいところを抉ったせいだ。もうの中は以上に知っている。だから、今のぎゅ、ぎゅ、と締め付ける間隔の短さが、彼女が限界を迎えそうな合図ということも分かってる。危ない危ない、感慨に耽っていたせいで、ノボリに会わせてあげるって言ってたの、忘れるところだった。
 おへその下のあたりにそっと手を当てれば、その薄い皮の下がびく、びく、と強く震えていた。あとひと突き、ふた突きくらいでは達するだろうというこのタイミング。今日はこれを待っていた。ぼくは、腰をモノが抜けそうになる限界まで引いて、代わりに耳元に唇を寄せた。
 
「──様」

 びくり、の身体が大きく震える。ぼくはまだ突いていない。絶頂のそれとは違う。さっきまであんなに快感に跳ねていたのが嘘のように、全身がこおっちゃった。
 とっておきのおいうちをしてあげようと、ぼくはの耳元から離れた。〝これ〟をするのはちょっとほっぺたが痛いんだけど……頑張って口角を下げながら。それで、こぼれ落ちそうなほど見開かれたくりくりおめめをじっと見つめてあげると、はその信じられないって顔をさらに真っ青にした。
 突然現れた、自分を犯すノボリの声、ノボリの顔。次第に壊れた玩具みたいにの全身ががくがくぶるぶると震え出していくのが面白くって、ぼくは一際強く腰を打ち付けてあげた。が目を丸くしたまんま堪えようのない悲鳴をあげる。最奥の、特にの好きなところを執拗に、ぐちゃぐちゃに責めながら……一方でとっても丁寧に、すっごくやさしく、混乱した顔のまんま喘ぐことしかできないでいるの耳にまた近づいて、そっと大好きな声を吹き込んであげた。
「ああ、様、大変お可愛らしいですよ」
「っいや、や、あ、ああ゛あ゛!」
「おや」
 弾けるようにしてが滅茶苦茶に暴れ出した。でも、ただでさえぼくより小さいのに最近はごはんをちゃんと食べていないから、抵抗したってぼくにわずかな引っ掻き傷を作ることしかできない。その両手だってすぐに、しかもぼくの片手で捕まえられちゃって……あーあ、ってばこんなに非力で、ほんと、なんて哀れで惨めでかわいらしいんだろう! おっと、笑ったらノボリの真似が崩れちゃうね。気をつけないと。
「どうされました? 様、もっと感じてくださってもよろしいのですよ」
「やだっ、やだああ、そのっ、ゥ、顔と声で、ッ呼ばないで、え゛、ああああ、やだ、や、もう、やァッ、ゃ、めて、やめてよぉ!」
様、もっと乱れた姿を、わたくしに見せてくださいまし。……イきなさい」
「や、あ、ノボリさ、あ、ノボリ、さ、あ゛、ああ、ア゛……っ、~~~ッ‼」
 もう敬語も、多分心を守るために無関心無反応を装っていた鎧も全部崩れきっちゃってどうしようもなくなっちゃったは、泣きじゃくり首を振ることしかできないまま……〝ノボリの言う通りに〟全身を痙攣させて思い切りイッちゃった。好きな人の名前を呼びながら達するの姿ときたら本当にかわいいったらなくって、もうぼくのほっぺたは耐えきれなかった。
「ね、、ほんとにおばかで、かわいそう。ノボリ、きみのこと、名前しか知らないのに」
 それにしても、ぼくに頭も心も体もなにもかも好き放題冒されて犯されて侵されてどろどろのぐちゃぐちゃになったきみがノボリに会ってもどうするっていうんだろう。多分、この子の頭の中には会ってどうするまでは考えられてないんだろうな。ただこの絶望から現実逃避に憧れを希望に縋ってるだけ。あ、そうだ、今度本当にノボリに会わせてあげようかな? どうせもしが何を言っても、ノボリはぼくのことを信じるだろうし。だって、双子の弟と、まともに話したこともない女の子だよ? どう考えてもぼくの味方をしてくれるでしょ。さらにそこで、何も知らないノボリが汚いものを見る目でもしたら、どうなっちゃうかな。ノボリ割と潔癖なところあるし。まあ、この子をここまで穢したのはぼくなんだけど。もうさっきの真似っこでほとんどぐずぐずなのに、今度こそ本当に壊れちゃうかも。うーん、それはちょっと困る。ぼく、まだもうちょっとで遊びたいし、退職とか諸々の手続きや根回しは面倒臭そうだし、でもの反応は見てみたいし……あー、すっごく悩む。ぼく、ノボリとポケモン以外の何かについてこんなに考えるのって、初めて。
 もうまともな言葉も無く、ぼくの揺さぶりに合わせてあーとかうーとか呻いて身体を捩らせるのおでこに、ぼくはなんとなく、そっとキスを落とした。
「ぼくにかわいがられちゃって、ほんと、かわいそう」
 一応ぼくだって、ここまでするつもりは無かったよ? 最初は、恋する女の子をちょっとからかって、それで楽しめれば良いかなって思ってた。でも、ぼくのやることなすこと全部に嵌って思惑通りに転がり堕ちて、一から十までぼくの好奇心を満たして楽しませてくれるが悪いから……こうなっちゃったのも、仕方ないよね。
 ぼくは、深い余韻からなかなか戻れずにまた達しているをぎゅうぎゅうと抱きしめて、なんにもつけていないそれで一番深いところまで押し入った。
ぼくはこの日初めて、の中まで全部侵しつくした。


あとがき
(220730 修正221201)


よかったなあとかあればポチッと→ ❤❤❤